蓄電池システム(BESS)戦略 ~スマートな電力変換装置(コンバータ)、自動化、サービスによる再生可能エネルギーの最大活用~
Blog Post | 10.09.2025 | 7 min read | Alberto Prieto
Blog Post | 10.09.2025 | 7 min read | Alberto Prieto
脱炭素化とエネルギー転換の加速に伴い、再生可能エネルギー分野はかつてない成長を遂げています。こうした中、電力系統の安定性と信頼性を確保するためには、蓄電池システム(BESS)の導入が不可欠です。国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までに世界の蓄電容量を6倍の1,500GWに拡大する必要性を指摘しており、COP29の「世界エネルギー貯蔵・送電網誓約」でも、強靭で脱炭素化されたエネルギー貯蔵と送電インフラの強化が強調されています。
高度な制御ソリューションは、再生可能エネルギーや蓄電システムの「頭脳」として機能します。パワーコンバータは分散型エネルギー資源と電力系統を接続し、需要に応じて電流と電圧のバランスを最適化します。これらはデータ集約型のシステムであり、日立エナジーのIoT接続やエネルギー管理機能と組み合わせることで、グリッドの信頼性と柔軟性を最大化し、豊富な洞察と分析を提供します。
私たちはこれを「つながりの力」と呼び、日々の活動の原動力としています。日立エナジーはパワーエレクトロニクスとスマート制御分野でイノベーションをけん引し、グローバルな専門家による膨大な研究開発の成果を活用しています。この「つながりの力」を生かして、次世代の系統用蓄電池システムを構築しています。
クリーンエネルギーの開発は、現在世界的に大きな注目を集めており、パワーエレクトロニクス技術の革新が急速に実用化されています。例えば、2025年4月にはアメリカン・クリーン・パワー協会(ACP)が、米国のエネルギー貯蔵業界による1,000億ドル規模の投資計画を発表しました。この取り組みは、米国製系統用蓄電池の構築・導入を通じて、2030年までに国内の蓄電需要を100%満たすことをめざすものです。こうした積極的な投資は、蓄電池容量の拡大と送電網インフラの近代化が、エネルギー転換において極めて重要であることを示しています。
一方、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州では、「ワラタ・スーパーバッテリー」が旗艦プロジェクトとして、電力系統の安定性向上、再生可能エネルギーの統合支援、新たなビジネスモデルの創出など、大規模系統用蓄電池システムがエネルギー転換を加速させる有効な手段であることを実証しています。
しかし、蓄電池や太陽光パネルの導入だけでは、真のエネルギー転換は実現できません。太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの移行を円滑に進めるためには、パワーエレクトロニクス、オートメーション、デジタル化など、これらのシステムを支える先進技術の研究開発に、さらに多くの投資が必要です。
蓄電池向けソリューション(BESS)は、近年著しい進化を遂げてきました。従来は、短時間の電力供給にとどまり、コスト高や柔軟性に乏しい導入モデルが主流であったため、限定的な用途にしか適用できませんでした。こうした制約により、BESSの大規模展開や、電力系統が求める高度なバランス調整の実現は困難でしたが、現在は状況が大きく変化しています。
現在、BESSは大規模な導入が可能なほど成熟しつつあります。リチウムイオン電池の価格低下や、電力変換技術の進歩により、周波数調整から系統強化まで多様なグリッドサービスの提供が可能となりました。これにより、BESSは単なる技術資産にとどまらず、戦略的な金融資産としての地位も確立しつつあります。
一方で、導入および運用の品質、特に、蓄電池と電力変換システム(PCS)、自動化、デジタル化の統合部分においては、依然として遅延やダウンタイムが発生するケースが見受けられます。そのため、信頼性とシームレスな統合を実現するコンバータ技術への投資が、コストのかかる障害を回避するために不可欠となっています。
BESSの価値を最大限に発揮するためには、コンバータおよび制御技術が並行して進化し、単なる追従にとどまらず、技術革新をリードすることが不可欠です。より高度で信頼性の高いコンバータの開発は、システムの統合性や制御性能の向上、さらには投資収益の最大化に直結する重要な要素です。
現在、コンバータは電圧や周波数の安定化にとどまらず、送電網の多様なニーズに柔軟に対応し、分散型エネルギー資源の調整役として、柔軟性、強度、疑似慣性、相互運用性といった多様な機能を提供しています。
この技術革新により、系統連系のあり方が再定義され、有効電力・無効電力のサポートによる柔軟性の向上、電圧・周波数の安定性の強化、再生可能エネルギーのシームレスな統合が実現しています。これにより、エネルギーシステム全体の効率性とレジリエンス(回復力)が大幅に向上しています。
また、基本的なコンバータと高性能なプラットフォームの違いは、技術的な面だけでなく、経済面にも及びます。最新の半導体技術を活用したパワーエレクトロニクスと高度な制御システムを組み合わせることで、市場の動向や規制に応じて多様な発電設備系統連系サービス(アンシラリーサービス)を収益化できる新たなビジネスモデルが創出されています。これにより、コンバータはBESSをコストセンターから収益を生む資産へと転換させるのです。
さらに、コンバータの設計や制御アルゴリズム、データ駆動型サービスにおける継続的な研究開発(R&D)は、さらなら価値創出の鍵となります。コンバータがよりスマートになることで、エネルギーシステムはより一層柔軟性・収益性・強靭性を高めていきます。
コンバータプラットフォームの進化は、物理的な設計にとどまらず、知能性、適応性、そしてレジリエンス(回復力)といった多面的な機能拡張へと広がっています。現行のシステムは、単なる電力変換にとどまらず、予測・保護・最適化を実現する設計となっており、日立エナジーによる電力変換・制御ソリューションサプライヤーであるスペイン・eks Energyの買収により、最先端技術への取り組みと開発力がさらに強化されています。
主な先進技術の例は以下の通りです:
2025年には32.5GWの新たな大規模太陽光発電が追加される見込みであり、北米は持続可能なエネルギーへの世界的な移行を主導するための強固なポジションを確立しています。政治的な動向に左右されることなく、北米のクリーンパワー産業はすでに継続的な成長とイノベーションを実現しており、現在では、北米は世界最大級のBESSおよびアンシラリーサービス市場の一つとなっています。
北米の電力事業者がエネルギー貯蔵と系統運用におけるベストプラクティスを継続的に採用することで、再生可能エネルギーの統合をより効果的に推進し、安定した電力供給を維持しながらBESSを収益源として活用することが可能です。
エネルギー転換は、北米のエネルギー供給者に新たなビジネス機会をもたらす一方で、各電力会社には多様化するニーズへの迅速な対応と解決策の提示が求められています。再生可能エネルギーの導入を進めると同時に、従来型電源の維持、蓄電池などのエネルギー貯蔵設備への投資拡大、電力系統の近代化も不可欠です。これらすべてを、家庭、工場、さらにはAIデータセンターに至るまで、安定した電力供給を維持しながら実現する必要があります。
エネルギー転換は、化石燃料への依存を減らすことだけではなく、電力の生成・貯蔵・供給の方法をよりスマートで強靭、かつ持続可能な形に再構築することを意味します。BESSはこの転換の中核を担う存在ですが、単独では十分な成果は得られません。貯蔵設備、コンバータ、電力系統を結ぶ、強固な「つながりの力」こそが、次世代のエネルギーシステムの鍵となります。
今私たちが、R&Dや高度なサービスに投資することは、単なる技術課題の解決にとどまらず、クリーンエネルギーが常に利用可能で、信頼性が高く、持続的につながる未来の基盤を築くことにつながります。これこそが、私たちに与えられた大きなチャンスであり、社会全体で共有すべき責任です。
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