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エネルギー取引の意思決定を加速する統合型ETRMソリューション

Blog Post | 06.07.2026 | 6 min read | Michael W. Hinton

市場変動が高まる時代に、エネルギー取引の判断をより早く、より的確に。

日立エナジーにとって、2026年のEnergy Risk Awardsで「CTRM Software House of the Year」を受賞したことは、大きな節目となりました。しかし、それ以上に重要なのは、この受賞がエネルギー市場で進む大きな変化を映し出している点です。

気象条件の変化、再生可能エネルギーの拡大、規制環境の変化、新たな需要構造の出現により、エネルギー市場は大きな転換期を迎えています。それに伴い、企業における取引、リスク管理、事業判断のあり方も変わりつつあります。こうした市場環境では、従来の縦割り型ETRM(エネルギー取引・リスク管理)だけでは、十分に対応することが難しくなっています。

市場が求めているのは、予測、取引、契約管理、入札から請求までの業務プロセス(Bid-to-Bill)、そして事業運営を、エネルギー取引のライフサイクル全体で結びつける、統合型かつデータ活用型のETRMソリューションです。

新たな課題:市場の変動性の拡大、業務の分断、そしてリアルタイムでの対応が求められる環境

エネルギー企業を取り巻く環境は、市場変動の拡大、市場やシステム間の相互連携、再生可能エネルギーの導入拡大、規制要件の強化、AI技術の進化、気候変動の継続的な影響、需要パターンの予測困難化などにより、ますます複雑になっています。

従来のETRMソリューションは、より単純で変化の少ない市場環境を前提に設計されており、業務ごとの個別最適が機能していた時代には、取引業務の中核を担っていました。しかし、リアルタイムでの意思決定が重要性を増す現在、多くの従来型ETRMでは、今日の事業環境に求められる要件に十分対応しきれなくなっています。

エネルギー事業者には、変化する市場環境に柔軟に対応できる統合型プラットフォームが求められています。こうしたソリューションは、迅速な導入、ポートフォリオ全体の可視化、リアルタイムデータへのアクセス、AIを活用した高度な分析を可能にします。その結果、業務効率化と迅速かつ的確な意思決定を実現し、収益機会の拡大、コスト削減、規制対応、サステナビリティ目標の達成を支援します。

いま問われているのは、単にデータへアクセスできるかどうかではありません。重要なのは、データを一貫性のある形で整備し、意思決定に活用できる情報へと変換し、再生可能エネルギーやBESS(蓄電池システム)などのエネルギー資産に関する取引、商務業務、事業計画、投資判断に間に合う形で活用できるようにすることです。

次世代ETRMに求められる主要課題への対応

こうした変化に対応するため、日立エナジーの次世代ETRMソリューションは、三つの中核機能を軸に設計されています。

1.    エネルギーポートフォリオ全体の統合

グローバルなエネルギー市場の構造や運営の仕組みは、大きく変化しています。再生可能エネルギーの急速な拡大や電化の加速にともなう電力需要の増加に加え、事業者が管理すべき対象は、発電設備や蓄電設備などの物理資産、市場間の相互連携、さらには多様な規制要件へと広がっています。こうした複雑な環境では、事業全体をエンドツーエンドで可視化することが不可欠です。

企業には、価格、需給、信用、規制、オペレーションに関するさまざまなリスクを、個別ではなく総合的に評価できる仕組みが求められています。市場データ、物理資産、商務業務を統合的に管理する「統合型エナジーポートフォリオマネジメント(Integrated Energy Portfolio Management)」は、変化の激しい市場環境において、意思決定の質、一貫性、スピードを高める重要な方法として注目されています。

また、システムとデータを統合することで、商務業務、事業計画、投資分析、意思決定を共通のデータ基盤で支えることができます。

その結果、設備・資産の運用から市場取引までの各プロセスにおいて、部門ごとに異なるデータを使うことで生じる情報の不整合を抑え、より一貫性のある意思決定を実現できます。

 

2.    AIを活用した予測・最適化とBid-to-Billを統合した次世代ETRM

エネルギー市場は不確実性が高く、天候の変化、再生可能エネルギーの発電量、そして電力需要の変動によって大きな影響を受けます。

AIを活用した予測技術は、従来手法と比べて業務プロセスを大きく改善します。予測の更新頻度を高め、需給バランスをはじめとする価格形成要因をより高い精度で反映できるだけでなく、単一の予測値にとどまらず、不確実性を織り込んだ確率的な予測結果を提示することも可能です。

取引サイクルが短縮し、市場の不確実性が高まる中、予測精度の不足や予測結果の遅れは、リスク管理の有効性を低下させるだけでなく、証拠金負担の増加や収益機会の逸失にもつながります。ただし、予測機能だけで課題を解決できるわけではありません。

ETRMソリューションには、予測機能を最適化や業務実行プロセスに直接組み込み、市場分析から得られた知見を、最適な取引、ヘッジ、需給運用の判断へとリアルタイムにつなげる仕組みが求められています。

また、統合されたBid-to-Bill機能により、それらの判断をスケジューリング、精算、請求まで一貫して実行できます。これにより、手作業の削減、業務精度の向上、各エネルギー市場における規制要件への適切な対応を実現できます。

これらの機能を統合することで、予測から最終的な請求までの一連のプロセスにおいて、より迅速で最適化され、連携の取れた意思決定が可能となり、エネルギーポートフォリオ全体のパフォーマンス向上につながります。

 

3.    シンプルな業務から複雑な業務まで柔軟に対応できるワークフロー設計

エネルギートレーディングおよび商務業務では、市場の複雑化、契約形態の多様化、規制環境の変化に伴い、業務の多様性と取引量の双方が拡大しています。

こうした環境において、拡張性はもはや単なるシステム要件ではなく、事業成長と競争力を支える重要なビジネス要件となっています。

従来型のETRMソリューションでは、変化し続ける市場要件に迅速に対応することが難しくなっています。その結果、新たな取引や市場制度への対応が遅れ、手作業による補完業務の増加、運用コストの上昇、さらにはベンダー依存の高まりにつながる可能性があります。

市場環境や事業戦略がリアルタイムで変化する中、ETRMソリューションには、大規模なシステム改修を行うことなく、シンプルな業務から複雑で専門性の高い業務プロセスまで、柔軟に対応できる性能が求められます。さらに、将来の拡張を見据えたクラウドネイティブな構成により、ポジション管理、MTM(Mark-to-Market)評価、リスク計算の処理を高速化し、システム全体のパフォーマンス向上にも貢献します。

ETRMの構成には、分散処理レイヤー(ミドルティアサービス)や、コンテナ化、Kubernetesなどのクラウドネイティブ技術を組み込むことが求められます。これにより、処理能力を必要に応じて柔軟に拡張し、大量のデータを並列処理しながら、市場変動が極めて大きい局面でも安定したパフォーマンスを維持できます。さらに、柔軟に設定可能なデータモデル、ワークフロー、計算ロジックを組み合わせることで、新たな商業戦略をより迅速に実行でき、長期的なシステム運用コストの低減にも貢献します。

ETRMのフロントエンド画面:ポジション管理ダッシュボード

ETRMのフロントエンド画面:ポジション管理ダッシュボード

システム統合の容易さ、ニアリアルタイムでの業務運営、フィジカルデリバリーへの対応、サステナビリティ要件への対応は、現代のETRMソリューションに共通して求められる重要な要素です。

エネルギー市場のスピードが増し、変動性が高まり、市場間の相互接続が進む中、トレーディング、リスク管理、スケジューリング、分析、精算に加え、炭素会計、環境価値証書の管理・照合、排出量モデリングといった機能を個別に運用することは、もはや現実的ではありません。

企業には、シームレスなシステム統合に加え、保有ポジションやリスク状況をほぼリアルタイムで把握できる可視化機能、そして金融取引上の意思決定を実際の需給計画や受渡義務へと直接つなげる仕組みが求められています。

サステナビリティへの対応は、商務業務においても欠かせない要素になりつつあります。企業には、炭素リスク、環境価値証書、規制対応、事業パフォーマンスを個別に管理するのではなく、統合されたデータ基盤とワークフローのもとで一体的に捉えることが求められています。次世代のETRMソリューションは、データの集約、手作業の削減、意思決定のスピードと精度の向上を支援し、リスク管理、取引執行、サステナビリティ対応を一つの連携した運用モデルの中で管理できる環境を提供します。

「CTRM Software House of the Year」の受賞は、こうした取り組みの方向性が評価されたことを示すものですが、これはあくまで始まりに過ぎません。
日立エナジーは、手作業や分断された管理システムに依存する従来の仕組みから、統合され、拡張性を備えたエンドツーエンドのプラットフォームへの移行を支援するため、ETRMソリューションの進化を続けています。信頼性が高くタイムリーなデータは、組織にさらなる可視性と確信をもたらし、より迅速で質の高い意思決定を可能にするとともに、重要な事業戦略の実現を支援します。

こうしたETRMソリューションをいち早く導入・活用する企業は、市場変動への対応力を高め、複雑な規制環境への対応を強化し、サステナビリティへの取り組みを加速しながら、変化し続けるエネルギー市場で競争力を維持することができます。

 

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Michael W. Hinton
is Global Head of Energy Portfolio Management

Michael W. Hinton is Global Head of Energy Portfolio Management at Hitachi Energy, where he leads software solutions that support energy market operations, forecasting, trading, risk management and long-term planning. With more than 30 years of experience in energy technology and ETRM/CTRM software, he helps utilities and market participants navigate complexity and accelerate digital transformation across the energy transition.